学校教育の研究から「どんなICT活用で効果が出た/出なかったのか」を整理整頓

学校教育の研究を確認すると、「端末へのアクセスを増やす」だけでは学力改善が確認されない一方、「児童生徒の理解度に合わせて学習内容を変える」活用には、改善を示す研究があります。

ただし、比較実験で確認した効果と、利用状況・成績の相関は分けて読む必要があります。代表的な研究を、使い方ごとに整理します。

ICTの活用方法研究で確認された結果読み取れること・限界
一人一台の端末を配り、学校・家庭での利用を増やすペルーの農村小学校319校を対象とした無作為化比較試験では、15か月後の数学・言語の得点改善は確認されず。一部の一般認知能力には改善あり。この端末配布プログラムでは、利用増が教科学力の向上につながらなかった。すべての一人一台施策が無効とは言えない。研究:2012年
端末配布の効果を長期で追う同じペルーの施策を長期評価した2024年研究でも、学力への効果は確認されず。コンピューター操作技能は改善したが、一般認知能力の改善は確認されなかった。操作技能の向上と教科学力の向上は別。研究は、十分な教育的支援を伴わない機器提供の限界を指摘している。研究:2024年
理解度に合わせて、問題や学習内容・ペースを調整する低中所得国5か国、6~15歳の約5.3万人を含む16件の無作為化比較試験のメタ分析で、数学・読み書きに平均的な改善。効果量は0.18、学習者の水準に適応する方式では0.35。効果が確認された使い方。ただし、補充授業や追加学習時間を含む研究もあり、改善のすべてをソフトの機能に帰属できない。Majorほか:2021年
学校で、学習目的に比較的短時間使うPISA2022では、学習目的で1日1時間以内使う15歳の生徒は、使わない生徒より数学得点が高かった。社会経済的背景の調整後も平均14点の差。良好な成績との相関であり、ICTが得点を上げた証明ではない。「1時間が最適」という実験結果でもない。OECD:PISA2022
長時間使う/スマートフォンなどで注意がそれる使い方をするPISA2022では、学校での長時間利用は低い数学得点と関連。スマートフォンを頻繁に使う生徒ほど、数学の授業で注意がそれると報告する傾向があった。利用時間を増やせばよいとは言えない。ただし、これも相関分析で、成績低下の原因をICTだけに特定できない。OECD:PISA2022

※効果量0.18・0.35は、異なるテストの結果を共通尺度で比較した数値です。「点数が18%・35%上がる」という意味ではありません。

この比較から私が読み取るのは、ICTが「学習のどの部分を改善するか」を具体化する必要があるということです。

  • 機器整備は、学習機会を提供するための条件。
  • 操作技能は、端末を使うことで改善し得る成果。
  • 教科学力は、教材・課題・指導との組み合わせで検証する成果。

研究を踏まえた提案としては、導入台数や利用時間よりも、「つまずきを把握し、その生徒に合った課題を出し、理解できたかを確かめる」仕組みに注目するのがよさそうです。ただし、その仕組みを入れれば必ず効果が出るとまでは言えず、通常の授業と比べて何が改善したかを確認する必要があります。

成人研修への応用を考える際にも、この仕組みは検討候補になります。そこでの知識定着や実技への効果は、学校教育の研究とは別に確かめるべき事項です。

AI・ICT を活用した事業に関する経営コンサルティングは、株式会社光翼までお気軽にご相談ください。

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